【イケメン革命】月小屋続編◆返還の祭典【R-18】
第4章 DAY2【ヨナ・クレメンス】
同刻、セントラルの裏通り。
猫だまりにしゃがみこむ影がひとつ。
その影に近づく人物がいた。
「……紳士がこんな裏路地を歩くなんて、珍しいね?」
しゃがみこんでいた人物は、振り返らずに答えた。
「君に話があって来たんだよ……ロキ」
名前を呼ばれて、しゃがみこんでいたロキはすっと立ち上がった。
撫でられていた猫たちはいっせいに物陰へ隠れていく。
「なぁに?ウサギが猫に何の用事?」
にやにや顔のロキの先に立つのは、ブランだった。
「アリスが赤のクイーンと結婚するのは知っているかい?」
「うん、知ってるよー?こないだパーティしてたもんね」
「さすが、情報が早いね」
ブランが優しくふんわりと笑う。
「それにあたって、返還の祭典という儀式が始まっていてね」
「返還?なにそれ」
ロキはけだるげに、近くにあったゴミ箱の上に座った。
「一年前の『月小屋の宴』でアリスから能力を貰った者が、アリスに能力を返す儀式なんだよ」
「へぇー……そんなことやってるんだ」
「結婚するには必要なんだ」
ゴミ箱に座ったロキの正面にブランが立つ。
「ロキ」
「んー?」
ブランの笑みが、すっと消えた。
「……君はアリスから能力をもらっているね」
ロキは皮肉な笑みを絶やさない。
「だったら何なのー?」
「だとしたら返してもらわないと困るんだ」
「ふーん」
ブランとロキの視線が絡む。
「ブランも返すんだ?」
「当然だよ」
「で、どうやって返すの?」
ブランが再び紳士的な笑みを浮かべる。
「貰った時と『同じ』ですよ」
「なーんだ!簡単じゃん!」
ロキは嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
「じゃあまた、幹部の儀式が終わったら俺がアリスを迎えに行くね」
そう言ってゴミ箱から降りると、ロキの目が赤く光り、そのまま光の中に姿を消した。
「まったく……いたずら猫は始末におえないね」
ブランはメガネをくいっと上げて、裏路地を後にした。