第7章 近づく ~淡きひかり~
小さな流れが目にはいると、回りにはぽつぽつと小さな光が浮かび上がる。
「ほたる……」
歩みを進める度にその数は増し、少し開けた場所につくと、辺り一面を乱舞するように、淡き光が浮かんでは消えてを繰り返していた。
「綺麗……」
「呉服屋の番頭に教えられたが、まさかこれ程のものとはな……」
ひいろは俺の声など届かぬよう、その瞬きの乱舞に魅せられていた。
口角をあげ微かに唇を開き、驚きと嬉しさで潤ませた瞳。上気したようなその横顔に、俺は魅せられる。
色濃くなった夜の闇にまぎれ、ひいろが俺の顔を見ることのないよう願いながら、息をのみ惚けたようにひいろを見つめる。
淡き光が舞う中、ひいろの横顔は美しく浮かび上がり、俺の心を掴んで離してはくれそうない。
目を背け、なかったことにしようと、何度も消し去ろうと無意識に心の奥へと押し込めていたのに…
気づきたくない、気づかなければ良かった。この淡き想いに。気づけば、欲しくなる。認めれば、止められない。ただ、ひいろを哀しませたくはない。
ひいろの回りを舞う、近づいては離れる淡き光のように、俺の想いも揺れ動いていた。