第21章 動く3
秀吉と二人、引き摺るように連れてきた男を地下牢の床へと放り投げる。
酒樽から出された時には怯えていた男だが、ここへ来るまでに状況が飲み込めたのか、忌々しげにこちらを睨み付けていた。
牢屋番のつけた蝋燭がちろちろと燃える中、拷問用に立てられた木の柱に男の身体をくくりつける。手伝おうとする牢屋番を去らせた後で、男の猿ぐつわを外す。
「はっ………話すことなど、なっ、何にもない!!」
やっと自由になった口で大きく息を吸うと、男はそう言い放ち唾を吐き捨てる。
「ほおぅ。随分と威勢がいいなぁ。まだ、喚く気力があるとはな」
そう呟く俺の横で、秀吉は眉間に寄せた皺を戻さずに男に声を掛ける。
「あまり手荒な真似はしたくない。拐かした女達の居場所を教えてくれないか」
「……おっ、女の居場所など誰が吐くものか!殺すなら殺してみろ」
「殺すなどと言ってはいないぞ。手荒な真似はしたくないんだ」
「うるさい!居場所など知らんわ!
ふん、お前らの話は聞いていたんだ。先に顕如らが動けばいいのだろ。居場所さえ分からねば、我らの勝ちだ。残念だったな吠えずらかくのは、お前らのほうだ!」
男の答えに秀吉が小さくため息をつき、声を低くする。