第17章 離れる5【光秀編】
「三日後でよかろう。よいか、イチ」
「はい、それまでには」
「いろは屋の今後のつなぎは、光秀に。よいな、秀吉」
「はっ、この件に関しては、それがよろしいかと」
「そう言うことだ、光秀」
「はっ」
ことね達が去った後、そのまま留まっている御館様と秀吉、そして一之助と今後についての話しをする。
いろは屋で集めた情報と引き換えに、ひいろを止めるために。
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ひいろが戻ったと、俺が御館様に伝えるとすぐに一之助が隣の座敷へと消えて行った。俺はひいろの元へ戻ることができず、そのまま御館様の前に腰をおろした。
その後ことねと秀吉が皆のいる座敷に戻り、ひいろの体の具合と絵を描き直すということを報告した。皆が心配するなか、御館様は「その為に来たのであろう」と当然のように口にした。そう言いながらも、一瞬表情に変化が見えたのは、御館様のひいろに対する思いの表れだったのだろうか。
その後、仕上がったことねの絵と俺の絵が一之助の手により披露され、その出来栄えに皆が感心し賛辞を述べた。特に描き直されたことねの絵は美しく、神々しくさえ見えた。ことね本人は恐縮するばかりだったが、生き写しのようなその絵に皆が見惚れた。
墨で塗り潰されていたことねの顔は、柔らかな微笑みを浮かべ、全てを包み込むようなあたたかさが滲み出ていた。
はじめからひいろの眼にはそう映っていたのだろう。だが家康への想いが重なって、描けなかった。そんなところか………。