第14章 離れる2【家康編】
「……みつけた」
何となく探しに来た裏庭。
そこに、ひいろはいた。
物寂しくも整えられた裏庭。
手入れする者以外、あまり人が訪れることはない。
それを見越して、時々訪れていた俺の秘密の場所。ことねが現れてからは、あまり来ることもなかったけど、ふと思い出し足を向けた。
ひいろがこの場所を知っているはずないだろけど、偶然でもひいろがそこにいることが自然に思えた。
ひいろは、大きな古木に手を当てもう片方を自分の胸に当て、風に揺れ枝から葉が落ちるのを見上げていた。
黒髪が風に揺れ、それに合わせ見え隠れする首筋や、古木に触れる手首の白さがなんたが艶かしくも物悲しく、佇む姿は美しかった。
以前ならそんなこと思いもしなかったけど、このところ俺は、ひいろに対し何かを求めているような気がして、今までにない感情が沸き起こる。
声を掛けようと息を軽く吸った瞬間、気配を感じたのかひいろが振り向く。
俺を見ると驚いたように、一瞬肩を大きく揺らし、目を見開いた。泣いていたのか、ひいろの目の縁が少し赤い気がした。
それには気が付かない振りをして、距離を縮め声を掛ける。