第13章 離れる【光秀編】
「止まるかどうかは、ひいろが決めることだろ。けどな、俺は知った奴が簡単に命を捨てに行くのは気に食わない。やるんなら、一緒に行ってやるよ」
家康から視線をはずした俺に、いつものように政宗がにやりと笑ってみせる。
「微力ながら、お役に立てるのならば私もお手伝い致します」
右手を小さく挙げ、三成が次に続く。
「俺に何ができるかは分からないが、ひいろに危険が迫っているなら助けるのみだ」
膝の上に拳を握り、秀吉は厳しい顔でそう言う。
「……手を貸すよ、俺にはひいろの絵が必要だから」
不機嫌そうな声に視線を戻すと、声とは裏腹に強い眼をした家康が俺を見ていた。
「決まりのようだな、光秀」
御館様の声が静かに通る。
「はい」
そう答え、小さく頭を下げた俺に、御館様の声が続く。
「ひいろを、頼む」
はっ、として顔を上げた俺が見たのは、いつもの御館様の顔だった。だが、周りの武将の顔に残る驚きの表情を見れば、先程の言葉が聞き間違えでなかったことは明白だった。
御館様にとってひいろは、いったいどれ程の存在なのだろう?ひいろだからなのか、それともいろは屋だからなのか……驚きと共にまた、興味がわく。