第2章 気づき
はじめてひいろに会ってから、10日が過ぎた。俺は、その間安土を離れ任についていたが、それも落ち着き時間ができたので、いろは屋へ足を向けた。吉右衛門との約束もあるが、御館様の言葉も気になっていた。
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いろは屋の暖簾をくぐると、奉公人や大番頭が出迎える。
大番頭「お待ちしておりました、光秀様。」
光秀「今日来るとは言ってなかったがな。」
来ることを分かっていたかのように挨拶する大番頭に、一言告げる。
大番頭 「奥で主がお待ちでございます。」
俺の問に答えることもなく、何事もなかったような顔をして、大番頭は店の奥の離れへと、俺を案内した。
離れに入ると、すでに吉右衛門がおり、その隣に若い男が頭を下げ控えていた。上座に設けられた席につくと、男が顔をあげる。
光秀「…………!?」
その顔を見て、俺は言葉を失った。眼を見開き息をのむ俺を見て、吉右衛門が口を開く。
吉右衛門「お待ちしておりました、光秀様。ふっふっふっ……信長様はもっと面白そうな顔をされておりましたよ。」
吉右衛門の顔に目を向け、もう一度隣の男の顔を見る。
見知った、ここには居るはずのない男の顔だった。