第12章 【番外編】揺れる~家康編~
「…………ねぇ、家康。い・え・や・す! 」
「えっ、あっ、何? ことね 」
「何って、さっきから何度も名前呼んでるんだよ」
「あぁ、ごめん」
「……家康が素直に謝るなんて、珍しい」
「なに? 俺に嫌みが言えるの?」
「うぅ……ごめんなさい」
何も悪くないのに謝ることねがかわいくて、こっそりと口もとを緩ませる。
「家康、ぼーっとしながら、また胸のとこ撫でてたよ」
ことねが、にやにやしながら俺の顔を覗き込む。
「だから?」
「明日、ひいろちゃんに会えるんだもんね。やっと、手拭い返せるんだね。よかったね」
そう言って、ことねの笑みが深くなる。
先程光秀さんからの文が届き、明日ひいろが絵師として城に招かれたことを知った。