第1章 はじまり
家康 「そういえば、ひいろの人物画って、見たことないなぁ」
信長 「そうだな……」
そう言いながら、御館様が俺を見る。
光秀 「吉右衛門より、預かってきております。」
荷物の中から数枚の絵を取り出し、御館様の前に並べる。
信長 「ほぅ。随分と妖艷な絵を描きおる。」
艶やかに微笑む女。
窓辺で物憂げな表情で外を眺める女。
褥で、着物をはだけ誘うような視線をおくる女。
皆、絵の女達に引き込まれるかのように、息をのみ、食い入るように絵を見つめる。
ことね 「…綺麗……絵から出てきそうだね……。」
光秀 「ほぅ。そういう感想になるのか。家康や三成は違うらしいぞ。」
二人とも頬を少し染め、家康は絵から目をそらし、三成は穴のあくほど見つめていた。
秀吉 「あのひいろが、こういう絵を描くとはなあ……」
政宗 「しかし、いい腕だな。」
秀吉と政宗は、絵の出来ばえに感心し、興味深そうに見ている。
光秀 「はじめは常連客の要望で、気に入りの花魁などの絵を描くことが多かったらしいが、女達からの要望も増え、吉右衛門も男の絵を描くことを承知せざるおえなかったらしい。」
政宗 「じやぁ、お前は女達への生け贄か。」