第10章 【番外編】いろは屋~その二~
「ただ、ひいろの周りだけは、隙のないように固めておかなくてはいけない。分かっているだろうが、イチ、頼みましたよ」
「はい。お嬢様にはなんと?」
「ひいろには、もう少しことが掴めてから、私が話そう。奴等のことなら、狙われるのはひいろだからね。それはひいろも心得ている。だからこそ……」
三人の間に、重苦しい空気が流れる。
それを振り払うように、吉右衛門が落ち着いた声で言う。
「じぃ、イチ。ともかく今は、確かな情報を集めておくれ。本当に奴等が動くのなら、今度こそ本気だろう。そうはさせないように、こちらも策を練らなくては。頼みましたよ」
「「はい」」
その後も、三人の密談はしばらく続くのだった。人知れず、闇の中で動き出す影を捕らえるために。