第8章 触れる
俺の返事を受け、あさがひいろを伴い座敷に入っくる。
見ればひいろは、あの日と同じ浴衣を着て、俺の贈った朝顔の花簪をつけ、ほんのりと化粧をしていた。そして、俺の方を見て艶やかに微笑んでみせた。
あの日ことが、鮮明に思い出され身体の芯が、ぞくりと熱を持った気がした。
「せっかく綺麗にしていらしたのに、化粧をされて無かったので、私がさせて頂きまさした」
そう言って、あさは嬉しそうに俺を見る。
「光秀様、素敵な花簪をお選びになられましたね。さすがにございます。それにしても、若い娘さんがいるとようございますね。屋敷中の空気が和らぎます」
どうやらひいろは、あさの気に入りになったらしく、色々と世話をやかれている。
そんなあさに、朝顔の手拭いを渡すと、更に感激し何度もひいろと番頭に礼をいい、満面の笑みをうかべて下がっていった。
番頭もまた、ひいろの姿を確認すると、意味ありげな笑みを残し帰って行った。
そして、ひいろと二人きりになった。