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【文豪ストレイドッグス】愚劣なる恋愛詩

第17章 Cold water(福沢諭吉)


 彼女の目尻にたまった雫をふき取ると、彼女が震える声を吐き出した。

「…なんでも?」

「あぁ、なんでもだ。」

「じゃ、ぎゅってして。」

 言われるままに抱きしめると、彼女は私の背中に腕を回した。

 温かい温度が混じり合い、呼吸が重なっていく。

 髪をなでると、彼女が笑いを漏らした気がした。

「…ありがとうございます。」

 その言葉に、私は笑い混じりに言った。

「これだけか?」

「え?」

 彼女が私を見つめ、首をかしげる。

 その顔を見ていると、自然と口からは甘い声がこぼれ落ちた。

「お前は本来、もう少しわがままな性格なのだと聞いた。」

「…そんなこと、ないです、けど。」

 言葉が揺れ、視線も揺れる。

 私は深愛に笑いかけた。

「私にお前のわがままを聞く権利が欲しいんだが。」

 その言い方はずるいです、と。

 彼女はそう言って、私の耳に唇を寄せた。

「…いっぱい愛してください。私がこの先百年生きていくのに必要なくらい。」

「…お安いご用だ。」

 月が昇り、星が瞬く。

 昔を知り、未来を語る。

 今を愛して、愛される。

 彼女の頼みなら、何でも叶えると。

 そう心に誓いながら、私たちは温度を混ぜ合わせていった。








(千度転生しても生きていけるだけの愛を)

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