第14章 Rather be(江戸川乱歩)
彼女は滅多に怒らない。
異能柄なんだろうけど、どこか恋愛に対して達観していて、大概のことは笑って流すからっていうのもあるし、彼女が生来おおらかなのも大きいんだと思う。
だから今回のことはもう、僕にとっては大事件なわけで。
もうなにがなんだかわからない。
「乱歩が悪いんだよ。」
そう言って口を利かなくなった彼女。
そして。
「これは乱歩さんが悪いですわね。」
「ありえない…。」
「乱歩さん、さっさと謝っちまいなよ。早いに越したこたぁないから。」
哀れみと侮蔑の表情の女性軍。
鏡花ちゃんにまで言われては、もうどうしようもない気がする。
一体何したんですか、という表情の男性軍も、女性軍の雰囲気があまりに刺々しいためか、誰も助けを申し出ない。
「謝るって何をさ。僕何もしてないってさっきから言ってるよね?」
「しました。」
「しましたわ。」
「した。」
「してるねぇ。」
口を揃えて責める女性軍。
見ないふりふり男性軍。
「あー!もう、なんだってのさ!僕が何をしたっていうんだよ!」
ついに僕が大声を上げると、与謝野さんが呆れたように言った。
「乱歩さん、家にカレンダー持ってないのかい?」
「持ってるよ、それくらい。それがなんだってのさ。」
「無駄ですわ、救いようがないほど綺麗サッパリ忘れておられますもの。」
ナオミちゃんですらこの態度。
「もういいよ!僕何にもしてないから!」
結局逆ギレし、僕は寮に戻るため、廊下に出る。
後ろからため息が聞こえたけれど、僕は見向きもしなかった。