第7章 Hit me harder, again (続、福沢諭吉)
愛されるだけ愛されて。
もう限界だと。
これ以上は幸せすぎて死んでしまうと。
心も体も訴えた頃、ようやく社長は私の横に寝転んだ。
たくましい腕に頭を乗せ、私は社長を見上げた。
玉のような汗が流れ落ちる体を上下させ、呼吸を整えた社長は、こちらに視線を投げる。
「…どうした?」
「…社長、私のことどれくらい愛してますか?」
「…どれくらい……か。」
社長は視線を逸らし、しばらく考え込んでいたが、私の腰に手を回し言った。
「私の理念を覚えているか?」
「人類みな平等?」
「そうだ。しかし…。」
社長は私の髪を梳きながら、まっすぐに私を見つめた。
「お前だけにはできる気がしない。社員も乱歩も、友人も家族も、みんな人として等しくあるべきだと思っているが、お前だけは垢抜けて見えるし、大切にしたいと思ってしまう。お前の願いなら、どんな願いでも叶えたくなる。たとえそれが世界の理に反するとしても。私の理念が曲がるほど愛している、と言えば、伝わるか?」
泣きたくなった。
愛されているな、と。
なんで背伸びなんてしようと思ったのか、と。
等身大でも、私はこんなに愛されているじゃないか。
私はぎゅうっと社長に抱きついた。
嬉しくて、頭が真っ白になる。
何も考えられなくなる。
だからかもしれない。
その有り得ない言葉は、紛れもなく私の本音だったけれど、するりと水が指からこぼれるように、私の口から流れ出てしまった。