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【文豪ストレイドッグス】愚劣なる恋愛詩

第22章 All we know(中原中也)


「……結婚、するか。」

「…え。」

 その言葉は、一切の飾り気も、見栄も、思考も介入させることなく、俺の口から零れ落ちた。

 目を見開いてこちらを見た深愛に、俺は車を止め、もう一度言う。

「…結婚して、中原深愛にならねェかって言ってる。」

「…中也さん…、その…。」

「本気だ。」

 じっと深愛を見つめて囁けば、彼女は真っ赤になって俯いた。

「……中也さんとつき合い始めてから…何度も考えました…。」

「……?」

「…中原深愛って…なんかいいなぁ…って。」

「…っ、テメェ、返事してからそう言うことは言いやがれっ…!」

「結婚、したいで…。」

 したいです。

 そう言い切る前に、俺は唇を重ねた。

 最後まで言わせてやるべきだなんて百も承知。

 だけど、それでも、やっぱり我慢ができなくて。

 甘くとろけるようなキスは、思考までも溶かしていく。

 日が沈み、暗い海に月明かりが映る。

「…テメェは昨日、幸せの絶頂からは下がっていくだけだと言ったが。」

 俺がそう言うと、深愛がこちらを見る。

「幸せの絶頂なんて、いくらでもあとから更新されるだろ。…安心しろ、後悔だけは、させないから。」

 その言葉に、彼女は恥ずかしそうに微笑んだ。

「…中也さんと一緒にいられるなら、後悔なんてないです。これまでも、今も、この先も。」

 あたりめェだ、と。

 彼女を抱きしめてもう一度唇を這わせれば。

 どこまでもついて行きますから、と彼女のささやく声が聞こえた。







(色褪せることのない愛を君に。)
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