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【文豪ストレイドッグス】愚劣なる恋愛詩

第21章 The fighter(坂口安吾)


 彼女はそもそも、外国に売り飛ばされていたところを異能特務課に拾われたのだという。

 そういうわけで、特務課の人間からすれば彼女は古株で、別に地位が高いわけではないのだけれど、どこかみんな行儀がいい。

 そんなことを思いながら、職務中に堂々とウサギリンゴを作っている彼女を眺める。

「…最近ねー。」

 僕の視線に気づいたのだろう。

 彼女はなんの前触れもなく僕に話しかけてきた。

「武装探偵社の方によくお邪魔するんだけど。」

「はぁ、また何故探偵社なんかに…?」

 僕が訝しげに尋ねると、彼女は楽しそうに笑った。

「昔の安吾について聞こうと思って。」

「なっ…だ、太宰はだめです…!」

「なんで?」

 なぜって…と私は黙り込む。

 心底不思議そうにしているのが憎たらしい。

 あいつは危険だ、と。

 そう言ったら言ったで太宰からちょっかいをかけられそうだし。

 言わなければ言わなかったで何かあったときに罪悪感が…とか。

 安吾~、もっと私を信用し給えよ~、なんて嘯く太宰が浮かび、僕は眉間に深い縦皺を寄せる。

「…彼は異能無効化の能力を持っていますし…。」

「それくらい知ってるよ。」

「……元ポートマフィアですし…。」

「双黒の大きい方だよね。」

「………適当な男ですし…。」

 どんどん長くなっていく間に、彼女が嬉しそうにクスクス笑う。

 そして、僕の座る椅子の肘掛けに腰掛けて、僕の顔を覗き込む。

「…本音は?」

「………………あの人は女の人なら誰でも口説きますから…。」

 んふっ、と。

 彼女が笑いを漏らし、この笑い方は笑ってはいけないとわかっていても嬉しくて笑ってしまうとき、なのだと前に聞いたのを思い出す。

 だってついつい笑っちゃうの、と。

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