第20章 Kiss me quick(太宰治)
「……は…?」
彼女が叫んだ言葉に、私は思わず拍子抜けして、彼女の肩を掴んだまま固まる。
「お、治にはわからないかもしれないけど、女性の生理は赤ちゃん生むためにあるの!だから生理前はムラムラするの!けどまだ治と二人でラブラブしてたいの!だから危険日はヤ!触らないで!」
なんだそれ。
なんだそれは。
そんな可愛いこと言われてさ、我慢できる男っている?
「…はーい、理性切れましたー。」
「話聞いてたの!?」
どさっと畳に押し倒された深愛が、身をよじって逃げようとする。
「聞いてた聞いてた。大丈夫、避妊はするから。」
「聞いてないし大丈夫じゃない!」
「いいからいいから。」
そう笑ってキスを落とせば、最初こそ抵抗していたものの、すぐにおとなしくなる。
ちょろいちょろい、なんて思いつつ、多分一番ちょろいのは私なんじゃないかと思う。
あんな一言でもう止まれない。
「治…。」
もういいや、と。
そう呟いた彼女が、爆弾を落とす。
「いっぱい愛して…きっと今日は、簡単には満足できないから。」
(止まれなくていいから、早く私にキスしておくれよ。)