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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第2章 僕とおそロシア


『モノトーンなHistory・2』


「きっと、そこまでの手間が惜しいんでしょう」
教授と連絡をつけた純は、自分達と同じように校舎に入れずバリケードの前で屯する同級生の姿を見つけると、彼らに近寄った。
「よう、純。守道もおったんか」
「様子は?」
「何人かが説得しとるけど、聞く耳持たんみたいやな。よりによって、一番講義が集中する校舎前を塞がんでもええやろ」
「このままだと、周囲の不満や事態は悪化する一方ですね」
「口で言うてもダメなら、実力行使しかないな…潰そ」
地の底を這うような声で呟いた純に、守道とその学生は恐れ慄く。
近くにいた同級生や友人達に協力を仰いだ純は、手早く彼らに指示をすると、自身は物陰で上半身だけジャージに着替え、サークル棟の人間から借りた馬のゴムマスクを手に、別の校舎から目的の校舎に繋がる裏道を素早く移動する。
間近で見る純の身のこなしに感心しつつ、彼に同行した守道は、次の瞬間バリケード越しに首謀者達の姿を確認した彼が、足を振り上げるのを見た。
「な、何や!?」
「先輩の足で全力はまずいですよ!」
「ちゃんと利き足やない方で加減しとるわ、ドアホ!」
突然の事に喫驚した首謀者は、破壊されたバリケードから現れた馬のゴムマスクを被った謎の男の容赦ないストンピングに、更に悲鳴を上げる事となったのだ。
お株を奪わん勢いの純の足技を、ユーリは唖然とした表情で守道のスマホ越しに凝視する。
「俺が言った理由が判った?」
「いや、でも…」
「それに、才能差が激しい芸術やスポーツと違って、勉強はやっただけ身につく。君次第で幾らでも未来は広がるんだよ」
守道の言葉は、ユーリの鼓膜と胸に浸透していった。

『漆黒の怪物』勝生勇利引退後の男子フィギュア界は、『青い瞳のサムライ』と『ロシアの貴公子』が人気を二分していた。
「ちょっとぶっきら棒だけど、あのクールなマスクが最高」「日本語も堪能で、インテリ系なギャップも素敵な王子様!」という女性ファンの賞賛とは対照的に、
「ユリオくん、オタベックが腹筋やられて息してない」
「本人が一番よく判ってるから、俺の黒歴史に触れんな!」
かつての己の所業を知る年長者達が揶揄する度、ユーリは羞恥に顔を赤くさせていた。
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