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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第2章 僕とおそロシア


『規則無用の弟子』


「ヴィーチャ!早く自分の練習を始めんか!」
「まだ勇利に言う事が残ってるから、あと5分だけ待っててよ」
「昨日もそうやって、何10分ワシを待たせたと思っとるんだ!」
リンクで恐縮してる勇利と激高しているヤコフに構わず、ヴィクトルは呑気にレッスンの最終確認をする。
「全くアイツは…」
「ちょっとええですか?」
すると、そんなヤコフの傍に純が近付いてきた。
勝生勇利の元同期で、ヴィクトルともそれなりの知己の間柄である純は、先日ピーテルで開催されたアイスショーでユーリの振付を作った経緯もあり、口には出さねどヤコフも彼に対してそれなりに感謝の念を抱いている。
そっと耳打ちしてきた純の言葉に、ヤコフは灰色がかった目を細めた。

翌日。
相変わらず時間になっても戻ってこない弟子に、ヤコフは無言で近付くと、昨日純に教わったヴィクトルの腕の痛点とやらを少しだけ強めに押す。
すると、無防備な悲鳴を上げたヴィクトルが、涙目で振り返ってきた。
「何するんだよ!」
「貴様が幾ら言っても聞かんからだ」
「ていうか、それアイツから教わったんだろ!俺よりもあんな愛人の肩持つ気!?」
「長谷津と違うんやから、時間くらい守らんかい。勇利に肩身の狭い思いさせんときや」
「俺とヤコフの事知りもしない癖に、余計な真似しないでくれる?大体お前、俺とヤコフで土産のランク変えただろう!」
「そんなん当たり前やんか…って、何でデコが知っとるん?」
「お前がヤコフに渡した京都の芋焼酎、俺にくれたヤツのプレミアラベルだったもの。味も違ってたし」
「師匠宛に贈った酒を、弟子が勝手に飲むな!」
「ヤコフは、そんな事で一々目くじら立てたりしないよ」
「それはアンタの師匠の心が、バルト海より広いだけやボケ!」
「カツ丼、アレお前の正妻と愛人だろ。早く何とかしろよ」
「いや…僕にあの2人を止める事は無理です」
「何故あの2人が揃うと、ああも醜くいがみ合うのかしら」
「だが…もしも、もっと早く純のような奴がヴィーチャの傍にいたとしたら、また違っていたのだろうか…」
スケートしか教えてやれなかった事に僅かな負い目を感じていたヤコフは、明け透けな本音をぶつけ合える相手が出来た愛弟子に、何処か憎めない視線を送っていた。


イイハナシカナ-?
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