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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第2章 僕とおそロシア


『成長した君と』


ロシアでの留学期間を終え、日本への帰国を控えた守道を、ユーリは数日間の休みを使ってモスクワの祖父の所へ招待した。
「一度センセーには、じいちゃんと会って欲しかったんだ」と、初対面の頃から随分と成長したユーリに祖父のコーリャを紹介され、守道は軽く会釈をする。
「ユーラチカが、世話になったそうだな」と、一見いかつそうな瞳を好意的に細めたコーリャは、守道に「カツ丼ピロシキ」という風変わりなものを差し出してきた。
「確か、センセーの父ちゃんはモスクワで働いてんだろ?その…迷惑じゃなかったら、挨拶する事って出来っかな?」
「俺の?」
あまり気は進まなかったが、ユーリの気持ちをふいにするのもどうかと考えた守道は、時間を見計らって父親の携帯に連絡した。
暫しの会話の後で電話を切った守道は、「丁度明日の夜、両親の家でホームパーティーがあるそうだから、一緒に行こうか」と提案した。
「センセーの父ちゃんって、どんな人だ?」
「うーん…色々と曲者な人かな」
「?」

「この度はようこそ。貴方のようなロシアの若き英雄が、ウチの守道と仲良くして下さったようで、感謝しております」
「ハ、ハジメマシテ…って、センセー!何で今まで黙ってたんだよ!?」
「俺、嘘は言ってないよ?父親が、モスクワの日本大使館で働いてるのは事実だし」
日本大使公邸に招かれたユーリは、大使である守道の父親を前に、半ばパニックに陥っていた。
「ただの留学生の俺が、そう簡単に君のコーチ達からお手当貰える訳ないだろう?君の振付の先生と俺の父さんが、旧い知り合いだったんだ」
「そんなの、リリアもヤコフもひと言も…」
「俺も振付師さんも、当時の君に話すのは未だ早いと考えていたからね。変に構えられたり吹聴されても困ったし」
「…俺、そんなに信用なかったのか?」
「ちょっと危なっかしい所があったのは否めないかな。でも今は、色々と成長したユリオくんとこうして一緒に過ごせるのを嬉しく思ってるよ。帰国前の良い思い出になった。本当に有難う」

お互いスーツに身を包み、「今夜は特別」とシャンパングラスを傾けてきた守道に、ユーリは照れ臭そうに笑った。
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