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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第2章 僕とおそロシア


『ジャパニーズオタク?on ICE』


スケート大国ロシアには、屋内外問わず沢山のリンクがある。
そんなある日、とあるピーテルの屋内リンクに、見るからに怪しげな2人組が現れた。
「すっ…スケートリンクキターっ!」
「ktkrー!」
1人は20世紀の遺物とも呼べる瓶底眼鏡にマスク、ニット帽を深く被ったジャージの男、もう1人はキーボードと携帯アンプにスタンドを携えた、ジャージ男と同じくサイズの合っていない黒縁メガネにバンダナ、チェックのシャツにジーンズという古典的『ジャパニーズオタク』なビジュアルの男だった。
2人は、リンクの片隅でぎこちない足取りでお辞儀の練習や滑り出したり、覚束ない手付きでキーボードを弾き始めたが、それらは最早コメディかと突っ込まずにはいられない程滑稽なものだった。
「おいおい、何で『スケーターワルツ』なのに、右手が黒鍵叩きまくってんだよ」
「つか、そのノロさ最早ワルツじゃねぇから!」
「へっぴり腰!そんなへっぴり腰でターンできる訳ねぇだろ…って、やっぱコケた」
「前のめりにいったぞ…もうお前らスケートじゃなくてコントでいけ。その方がウケる」
彼らを遠巻きに囃し立てていたギャラリーだったが、暫くの後、不意に勢い良く振りかぶったバンダナ男の指が、ラフマニノフの『パガニーニの主題による変奏曲・第18変奏』を優雅に奏で出すと、マスクを取り去った瓶底眼鏡の男が、ほぼ助走なしの3Aを披露した。
突如変貌した2人に周囲が言葉を失っていると、バンダナ男の演奏が別の曲になり、瓶底眼鏡の男がリンクに見事なステップを刻み出す。
『Yuri on ICE』の音楽に乗せた瓶底眼鏡の男がフィニッシュポーズを取ると、リンクのあちこちから拍手と歓声が起こった。
「マーベラス!2人共お疲れ様♪」
「罰ゲームにしては、こんなのヤリ過ぎだよ!恥ずかしか!」
「ぶふっ…カツ丼とサユリのニッポンオタクファッション、マジやべぇ…」
「ユリオくんは、画像を消しなさい!ホンマ、『Рахма́нинов』でラフマニノフって読ますの、強引やんな!」
「…まだ前回のネタ引っ張るの?」

「彼らは一体何者なのだ」という質問に、ヴィクトルは「現世界チャンプと、その振付師で元日本強化選手」と、度肝を抜くギャラリーを見ながら愉快そうに答えた。
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