第1章 僕と勇利、時々『デコ』
『賢者?の贈り物・1』
勇利のEX作りその他を終えてロシアから無事帰国した純は、それから数日後ヴィクトルに頼んだ航空便による荷物の箱を受け取ると、彼に電話をした。
「今、平気か?さっきこっちに荷物届いたわ。お蔭さんで破損も盗難もナシや。有難うな…それは置いといて」
ひと呼吸おいた純は、己の私物や土産物に紛れて箱から出てきた外国の下着メーカーの小箱を手に取ると、次の瞬間握りつぶさん勢いで怒号を上げた。
「このデコ露助えぇぇっ!どさくさに紛れて、何ちゅうけったいなモン入れてきとんねん!?」
『えー、俺からのささやかなプレゼントだよぉ。勇利やユリオのサポートで、お前1ヶ月近くも恋人ほったらかしにしてただろ?』
かつてのコーチで今は大阪で一緒に暮らしている恋人の藤枝の事を仄めかされて、純は目に見えて動揺する。
「…余計なお世話や。ロシアにおった時も、マメにメールその他で連絡しとったわ!アンタも見て知っとるやろ!」
『お前、バカ?健康な成人男性が、それだけで満足するとでも思ってんの?』
「せやから、それとこの下着の関連性を教えてくれ!」
これまで身に着けたことのないようなデザインと素材と布面積を誇る下着を忌々しく見つめながら、純は更にヴィクトルに詰問した。
『判んない?俺オススメのそれで、今夜にでも恋人にサービスしてあげなよって事♪』
「僕は女性と違うねん。大体あの人は、付き合う前から僕の下着姿は何遍も見てきとるわ」
『アラサー男の性欲、ナメタラアカンデェ♪勇利だって、ああ見えて根はムッツリスケベな所あるし。ニッポンジンって結構変態チックだよね?』
「一緒にせんといてくれ。後、あんまり勇利にスケート以外で変な事教えるなドアホが」