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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第2章 僕とおそロシア


『大人になる君』


アイスショーで日本を訪れていたユーリが「インナーを買いたい」と言うので、純は彼を連れてとある衣料品店に出かけていた。
「ここのブランドなら、ロシアにも支店があるんと違うか?」
「ピーテルやモスクワにもあるけど高いんだ。日本で買った方が断然安いし、種類も豊富だしな」
確かにこのブランドの肌着は、保温や発汗作用に優れたものが多く、純達スケーターにも重宝されている。
1人の方がじっくり見れるだろうと思った純は、暫しユーリと分かれて自分とついでに同居している恋人の買い物をしていたが、インナーのコーナーでユーリと再会した。
成長期を経て、いつの間にか自分とほぼ身長が並ぶようになったユーリが、初めて会った頃とは異なるサイズの下着を手にしているのを何となく眺めていた純は、ふとある事に気づいた。
「大きなって、好みが変わったん?」
「…はっ!?」
背後から純に声をかけられたユーリは、思い切りビクリと身を震わせたが、暫し手の中の下着と純の顔を見比べた後で、うっすらと赤面する。
「あ…そこまで驚かせるつもりはなかってんけど。昔のユリオくんは、そうした色は選ばんかったなあって。確かに赤い下着は血行良うなるて聞くけど」
「そ、そりゃ俺もロシアじゃ成人になったし、昔のように変に粋がったり突っ張る必要もなくなったし。それに、えっと…」
「…?」
しどろもどろに言い訳を繰り返していたユーリだったが、やがて少しだけ周囲を窺った後でひとつ息を吐くと、「サユリならいっか」とか細く言葉を続けた。
「この色、アイツの…礼之の好きな色なんだ。だから…」
「あ…」
更に頬を染めながら言葉を切ったユーリは、純から背を向けると、そそくさとレジに向かって歩いていく。
その立ち姿や表情が随分と大人びている事に気づいた純は、頭の中で様々な感情が渦巻くのを覚えた。
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