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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第2章 僕とおそロシア


『競技とショー』


勇利が純の作るEXの振付に異議を唱える時は、大抵競技プロとの難易度の落差によるものが多い。
「もう少しジャンプの難易度上げた方が良くない?観てる人が退屈しないかな」
「僕が、そんなお粗末なプロを君に滑らせる筈ないやろ?」
「だってこれ、今の純にだって簡単に滑れる構成だし…」
「それだけが不満の理由なら、はっきり言わせて貰うわ。EX舐めんといてな」
双方互いの主張を譲らなかった結果、2人で純の振付を滑って周囲に評価して貰おうという事になり、たまたま同じリンクにいたユーリにそれを頼んだ。
「えー?ヤだぜ俺!どっち選んでも、後で選ばなかった方に文句言われそうじゃねぇかよ」
「勇利はともかく、僕はそんな真似絶対にしいひんから」
「僕だってしないってば。頼むよユリオ。こういうのは第3者の意見も大事だし、君なら遠慮なく言ってくれそうだ」
「…後で何か奢れよ」

そう言いつつも律儀に付き合ったユーリは、2人の演技を真剣に見比べた後で、次のように言った。
「これが試合で俺が審判なら、間違いなくカツ丼に高得点を付ける。だけど…俺がアイスショーを観に行こうとしてる客で、どちらかのチケットしか手に入らねぇとしたら、サユリの方を選ぶ」
「!」
「…そういう事や。競技とショーでは、魅せ方が違う。確かに競技者としての僕は勇利より格下やったけど、僕は『デコ』にも負けん位、スケーター勝生勇利を魅力的に見せる振付を作れると自負しとる」
「それは言い過ぎじゃない?『愛人』の分際で、『正妻』の俺に敵うとでも?」
「…おったんか。なら、もうちょっと早う勇利に助言してくれても良かったんと違うか?」
「競技プロなら口出したけど、EXならお前に任せて問題ないし」
いつの間にか傍にいたヴィクトルや純達の言葉を、暫し頭の中で反芻させていた勇利は、「生意気言ってゴメン」と純に謝罪した。

「まったく、若造どもの成長は侮れんな」
「カツキや純もだけれど、まさかユーリからあのような殊勝な言葉が出るとはね」
そんな彼らのリンクでのやり取りを、ヤコフとリリアが何処か微笑まし気に眺めていた。
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