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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第2章 僕とおそロシア


『銀盤の冒険者・2』


リンクの上では、プログラムによって普段とは全く異なる自分を演じる事がある。
そして、経験やそれに見合った報酬を稼ぎ、レベルやスキルを上げている。
形は違えど、強くなる為のプロセスは存外似ているのかも知れない。
コーチのヤコフやリリアに守られ無我夢中だったシニアデビューの頃と違い、流石に最近は、競技以外のスポンサーや関係者の雑音が嫌でもユーリの耳に入るようになってきた。
(確かにお前らの言葉は正しいんだろう。でも、それが何だというんだ)
リンク以外でなら、幾らでも聞いてやる。
だがここは、このリンクは、お前らの踏み込める場所なんかじゃない。


「…『貴様らのような薄汚い冒険者共に、この迷宮の価値を知る必要などない。遥か昔に失われた遺物を用いて、私はこの国を統べる王となるのだ!』」
依頼者として同行していた学者の正体は、迷宮の奥に眠る古代の遺物を狙う闇の魔術師だった。
魔術師の象徴たる杖を所持していなかったが、その代わりとなる発動体の腕輪を見逃していた冒険者達は、彼の放った魔法により、メンバーの半数が眠らされてしまった。
通常の人間よりも魔法に耐性がある少女は、抵抗に成功すると傍らの仲間を軽く蹴りつける事で起こしながら、その魔術師を睨む。
普段は寡黙な少女の口から、怒りに満ちた言葉が発せられた。
「『…言いたい事はそれだけなの?だったら、今すぐ出ていきなさい。ここは、貴方の好きにして良い場所なんかじゃない』」
短剣を持つ手とは反対の手から、現時点で彼女の扱える最高位の呪文と共に戦の精霊が現れる。


(──『ここは、スケーターの為の場所よ』)


前方に片手をかざしながら、ユーリはリンクで己の戦いを始めた。
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