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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第2章 僕とおそロシア


『銀盤の冒険者・1』


純の大学時代の後輩で現在はピーテルの大学に留学、ユーリに日本語を教えている篠守道は、以前より大分ユーリが慣れてきたのを覚えると、ある時彼を自分の趣味であるTRPGのセッションに誘ってみる事にした。
「俺、RPGって殆どやった事ねえんだけど」
「そりゃ丁度良い。TRPGはコンピュータゲームとは違った面白さがある。まずはセッション当日までに、君の分身となるキャラを作ってみよう。そこに書かれた条件を守れば、後は好きにしていいから」
守道から典型的なファンタジーTRPGの基本的ルール、及び条件を記されたレポートを渡されたユーリは、半ば困惑しながらそれらに目を通す。
「最低1つは素の自分と全く違う要素を入れる事…って、何だよ?」
「だって、折角のゲームじゃないか。普段と違う自分を演じるのも醍醐味だよ。君も、競技で似たような事あるだろう?」
守道の助言もあって、何とかユーリはキャラメイクを済ませると、初めてのセッションに参加した。
メンバーは守道の同級生や他国からの留学生で、予めユーリが初心者なのを聞いていたのか、ユーリの作ったキャラに合わせた彼らの分身を用意していた。
「それじゃ、セッションを始めようか。俺はこのゲームの進行役のGMだ。まずは自己紹介といこう。ロールプレイだから、演じるのも忘れないでね?」
「わーったよ。俺、じゃない…ゴホン、『私の名前は…」
ユーリの作ったキャラは、寡黙な16歳の人間の少女だった。
捨て子だった彼女は盗賊団に拾われたものの、悪辣な彼らの所業に耐え切れず、11歳の時にそこから逃げ出した末行き倒れていた所を、村はずれの老婆に救われた。
その後は呪術師である老婆の手伝いをしながら暮らしていたが、15歳の時にその老婆も亡くなると、少女は村を出て冒険者となったのだ。
生きる為に身に着けた盗賊の技術と、老婆に才能を見出された精霊魔法を駆使しながら、未知の旅路へ向かう彼女を待ち受けるものは…
最初は戸惑いがちだったユーリも、守道のマスタリングとメンバーのサポートで、少しずつだがゲームを楽しんでいったのだった。


(ああ…競技もゲームもどっか似たとこあるんだな)
滑走の直前、ふとユーリは守道達とのセッションを思い出していた。
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