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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第2章 僕とおそロシア


『シンデレラは、不在』


人間大小問わず様々なコンプレックスはあれど、純には特に2つのコンプレックスがあった。
まず1つは、笑うと右の頬にだけ出来る笑窪。
そして、もう1つは。

ピーテル滞在中、ヴィクトルの家に何度か訪問した事がある純は、アイスショー終了後にヴィクトルから内輪の友人のみのホームパーティーに招かれたのだが、当日になって急遽取材の入ってしまったヴィクトルから「夜のパーティーに向けて勇利と準備しといて」と留守番を押し付けられてしまった。
とはいえ、必要な食材や酒類は予め用意・手配してあったので、2人でのんびりテーブルのセッティングや下ごしらえをしていると、ドアベルを鳴らす音が聞こえた。
「ジジイに頼まれたから手伝いに来てやったぞ。おいカツ丼、玄関にある靴何処の女のだ?」
「ユリオくん、それ僕の」
備え付けの室内履きに替えながら尋ねるユーリに、純は苦笑混じりに答えた。
身長は勇利より若干高い純だが、足のサイズは24センチで、靴によっては女性物も履ける小ささなのである。
「マジかよ?サユリって、俺より足小せぇんだな」
「せやから、サイズ探すのひと苦労やねん」
「競技時代も、純のスケート靴目立ってたよね」
ユーリのお蔭で随分作業が捗ったので、3人でティータイムを楽しんでいると、またもや新たな訪問者が現れた。
「準備はどうだ?途中で偶然クリスに会ったから合流したんだ」
「今日は女子会ならぬ男子会って聞いてるけど、誰か彼女連れ込んでない?」
「クリス、あれ純の靴だよ」
「ウソ?純、あんなに小さいの?」
「…その形容詞の前に『靴』を、付け加えてくれへんか?」
ギオルギーとクリスの分の紅茶を淹れながら、純は憮然と返す。
その後、パーティーの時間が近付くにつれ続々と人が集まり、その度玄関の小さな靴についての言及がなされていた。
そして、
「皆お待たせ!勇利、あの靴何?俺のいない間に何処の愛人とイチャついてるの?」
「はいはい、勇利の愛人『サユリ』ちゃんやで…って、ドアホ!初訪問からこれまで散々僕の靴からかってたやろ!自分がクソデカいから羨ましいんか!」
「デカくない!平均値!」
ホストの帰宅と共に早速繰り広げられた正妻と愛人の喧嘩に、一同は笑い合った。
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