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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第2章 僕とおそロシア


『長い?友達』


「『カツ丼。髪編ンデ』」
久々に一同が合流したアイスショーの控室で、以前より日本語の上達したユーリが、勇利に用具一式を差し出してきた。
「僕なんかより、ヘアメイクさんにやって貰ったら?」
「『今ヘアメイクみんな、女の支度でイナイ』」
「仕方ないなあ。どんな風にしたいの?」
「『コーンロウ、出来ル?』」
「それ、かなりキツく編まなきゃいけないから、髪痛むよ。ユリオ、今回のEXはしっとり系だし、前髪はポンパドールにして、サイドから後ろをダッチブレイドにするのはどう?」
「『じゃあ、それデいい』」
幼少の頃、ミナコの命令でバレエ教室の発表会やコンクールの度に女子生徒達の支度を手伝わされた経験から、少しだけ編み込み等の心得がある勇利は、いつからか時折ユーリの髪を編むようになっていた。
かつてのヴィクトル程ではないが、前回会った時以上に伸びたユーリの髪を、慣れた手つきで掬い始める。
心地良い感触にユーリが身を任せていると、控室にヴィクトルと純も入室して来た。
「何か回数重ねる毎に、勇利のアレンジ度UPしてへんか?」
「コラ。ユリオはまた、そうやって勇利を利用して」
「うっせーな。スタッフがいねーんだから仕方ねぇだろ。緊急措置だよ、緊急措置」
「…お前がさっき、美容師の申し出断ってたのを、俺が知らないとでも?」
「『サア?何ノ事か、ワタシ記憶にゴザイマセーン』」
妙に硬質さを帯びたロシア語の囁きにユーリが日本語で返している間も勇利は黙々と髪を編み続けた。
鏡の前でユーリがご満悦といった表情をしていると、隣のメイクスペースで、純が自分の前髪を編み込んでいるのを見つけた。
「サユリ、何してんだ?」
「ユリオくんが楽しそうやったから、僕も前髪だけ編み込んだろ、て。勇利もしいひん?僕手伝うから♪」
「え?」
「いいじゃん、カツ丼。皆でやろーぜ」
「面白そう♪俺の髪も編込みやってよ!」
「「「無理しないで」(せんで)いいぞ(ええよ)」」
「…君ら揃いも揃って何なの?」

その日のアイスショーに出演した男性スケーター達は、妙に編み込み率が高かったという。
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