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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第2章 僕とおそロシア


『帰国前のお約束』

長かったようで短かった純のロシア滞在も、いよいよ帰国の日が近付いてきた。
「勇利、トレーニング用のシャツやインナーいるか?袋から出しただけで、僕1回も着てへんから」
「いいの?有難う」
「ユリオくん、このストール良かったら貰うてくれるか?前にリンクで貸した時から、君に似合うて思うてたんや」
「マジかよ?それ、軽くてあったけぇから気に入ってたんだ!」
「ねぇ、お前のジャケット、ちょっとサイズ大きくない?俺が引き取ってあげてもいいよ♪」
「ヒトの一張羅を巻き上げようとするな。…あかん。それでも、荷物が全然スーツケースに入らへん」
日本から持参した土産物その他は全て捌いた筈が、逆に家族達への土産をはじめ、ヤコフとリリアに持たされた品物や現地で純が購入した物などが、結構な量になっていたのだ。

「まあこっち来る前も、日用品とかこの部屋の持ち主に予め受け取って貰うてたしなあ…僕と入れ違いで戻ってくるから、またお願いして送り返して貰うか」
ロシア滞在中、純は現在一時帰国中の日本人駐在員の部屋を、期間限定で間借りしていたのである。
「だったら、俺名義で送ってやろうか?多分ロシア1事故の心配なく、安全に日本に届けて貰えるよ。キョウトで良いんだよね?」
「あ、僕春から大阪に引っ越してん。学校も卒業したし、実家の家業手伝う訳でもないから。仕事や国内外の移動考えると、大阪の方が何かと便利やしな」
「え?『ヒゲ』の恋人と蜜月決め込んじゃったの?じゃあ、帰ったら…ふふふ♪」
「やかましい、痛点突かれたいんかこの『デコ』」
とは言うものの、ここは素直にヴィクトルの厚意に甘える事にした。
恋人の藤枝との新居の住所を日本語と英語の両方でヴィクトルにメールすると、改めて荷物の仕分けを始める。
「後で大まかな見積もりでええから教えてくれるか?」
「いらないよ。今回勇利やユリオへのお前の働きは、充分お釣りが来る位だし」
「…」
「その代わり、俺が日本へ行った時やもしもの時にはよろしくね」

その後、帰国した純が荷物に紛れたヴィクトルの差し入れに激怒したり、勇利と喧嘩をしたヴィクトルが単身大阪の住居に家出して来るのだが、それはまた別の話である。
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