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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第2章 僕とおそロシア


『おろしや臨時寺子屋、開校?』

昼食を済ませた純がリンクへ戻ろうとしていると、Jr選手の人だかりに遭遇した。
「やばい!宿題提出今日だったよな」
「お前、出来てる?」
「全然。どーせ俺らは学者さんになる訳じゃないし」
「でもあんまり成績悪いと、学校の先生がコーチに告げ口するから…」
所謂『スポーツエリート』の彼らだが、やはり最低限の教養は必須という事で、毎月決められた日には指定の学校に通っている。
ユーリは、かつてのヴィクトル同様専属の家庭教師に勉強を見て貰っているが、スケートとは勝手が違うようで、テキストを前に顰めっ面をしている姿を見た事があった。
地元の大学院を卒業した純は、勉強で困ったという経験は殆どないが、何となく気になったのでさり気なく輪の中へ近づくと、彼らのテキストに視線を移す。
筆記用具を手に幼い唸り声を上げているJr選手に「それは、実際に自分でグラフ書かんと判らんで」とお節介をした。
「…あんた誰?」
「私知ってる。ユウリ・カツキと同じ日本のスケーターよ」
「そーいや、この頃ユーリとも一緒にいるよな」
遠慮なく囁き合う子供達を「こういうんは、日本もロシアも変わらんなあ」と思いながらも、純は筆記用具を借りると、テキストの余白部分にグラフとそれにより作られた図形の説明をした。
純にとっては容易い問題だが子供達には大層驚異だったようで、目を輝かせて「自分にも教えて欲しい」「この問題解る?」と矢継ぎ早に質問を重ねてきた。
「僕は聖徳太子やないから、そんないっぺんに言われても困るて!…皆、テキスト一式もっといで」

「…何やってんの?」
「いやー、未来の名選手達の為に臨時のカテキョというか寺子屋のセンセというか…」
胡散臭げに自分を見るヴィクトルを他所に、純は備品のホワイトボードを借りて、Jrの子供達に臨時授業を行っていた。
「ったく、気安くサユリ頼ってんじゃねえよ。お前ら、宿題くらい自分でやれよな!」
「…ユリオもね」
「俺はいいんだよ!こないだカツ丼にロシア語教えてやっただろ?だから、それでチャラだ!」
「単語1つと宿題数ページがチャラになるのかなあ」と思いながらも、勇利はユーリの勉強を手伝っていた。
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