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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第2章 僕とおそロシア


『リンクの美少女?』

アイスショー開催直前。
控室の扉を開けた純とリリアは、中で勇利に前髪を編み込んで貰っているユーリの姿を目にした途端、脳裏に何かがひらめくのを覚えた。
「リリアさん、」
「判っているわ」
いつの間にかメイクBOXを取り出していたリリアの瞳が何処か不敵な色に輝くと、照れ隠しに勇利に軽口を叩いているユーリの元へと歩み寄る。
「仕上げをしましょう、ユーリ・プリセツキー。中途半端ではなく完璧な美しさにする為に」
「はぁ?ちょ、おいっ」
「ユリオくん、君のその姿も今日限りや。どうせなら開き直ってコンセプトは『美少女』でいくで。勇利もナイスアシスト!」
「え…えっ?僕はただ、ユリオの前髪が長すぎて演技の邪魔になりそうだからしただけで…」
「今日の貴方は、プリマではありません。スケートに出会ったばかりの美少女です」
「美少女って何だよ!?やめろよ、恥ずかしいだろ!?」
「ワオ、何か面白そうな事やってる~♪ユリオー、手ぇ貸して」
いつの間にか現れたヴィクトルが、リリアから爪とぎを拝借すると無駄な抵抗を試みるユーリの手を取った。

リリア渾身のメイクにより、鏡の向こうから金髪の美少女がユーリを胡散臭げに見つめてくる。
「……めっっっちゃ、可愛い。ユリオくん、写真撮ろ!そこのライトの前に腰掛けて、ちょっと顎引いて目線はこっちや」
「もー、好きにしろよ…」
「気を引き締めなさい!美少女が人前でそんな顔をしてはいけません!」
「今なら経歴その他誤魔化して、『ミス・スモールロシア』出れるんじゃない?絶対イイ線行くよ♪」
「馬鹿野郎、そのコンテスト会場モスクワなんだから、じいちゃんや地元の奴らにすぐバレるだろ!」
「でも、本当に可愛いね。いつもと全然雰囲気違うし、今回のユリオのプログラムにも合ってると思う」
「…ま、まあ…見てくれも演技の大事な要素だしな…このプロ作ってくれたサユリにガチで応えられるなら、美少女にもなってやるか」
勇利の言葉にスマホを構える純を一瞥したユーリは、何処と無く達観したような顔で呟いた。

その後。
開き直ったユーリのインスタにアップされた「優勝目指して美少女コンテスト会場に到着!だけどここ、妙に殺風景で寒い!」という画像は、かつてない数の反応があったとか。
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