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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第2章 僕とおそロシア


『同じ【僕】』

かつて半ば強引に年末の長谷津に連れて来られたユーリ・プリセツキーは、滞在中ふとした切欠から純にとある頼み事をした。
しかし、「それは僕からは教わらん方がええ。代わりに、僕の知り合い紹介するから」と、現在ピーテル市内の大学に留学している純の学生時代の後輩に、ユーリの願いを叶えてくれるよう依頼したのだった。
東京出身だが純と同じ関西圏の大学で学んでいたその彼は、「純先輩から話は聞いてるよ。俺で良かったら喜んで」と、気さくに応じてくれた。
一見ノリの軽い彼だが、いざ本題に入ると純と同じくインテリな面を覗かせ、ユーリのやる気も程よく擽ってくれていたのである。

勇利のサポートにピーテルを訪れていた純は、練習が休みの日を利用してその後輩と久しぶりに会って話をした。
「ユリオくんの様子はどない?」
「ああ、良い子ですね彼。外国人が日本語習得するのって簡単じゃないのに、凄く頑張ってるし」
「この間も『デコ』のおらんトコで、コッソリ勇利に片言で日本語使うてたからなあ。ホンマ有難うな」
「純先輩だと、イントネーションの問題がありますからね。真顔で標準語喋る先輩なんて、宴会芸でしかお目にかかれないし」
「やかましいわ。で、他に何かあったんか?」
「そういえば、俺とのレッスン始めて間もない頃…」
何でも彼が日本の1人称について説明した際、ユーリが迷わず選んだ人称代名詞があったという。
「君のイメージなら『俺』が似合いそうだけど?」と返す彼に、ユーリは「こっちがいい。フォーマルでも使えるし、丁寧っぽく聞こえるからな。こういうの日本ではえっと…ギャップ萌えっていうんだろ?」と、頑なにその代名詞に固執していたのだ。
「一見跳ねっ返りのロシアっ子が、日本語で『僕』とか話すの、本当に可愛らしかったですよ。やっぱり先輩の影響ですか?」
「──いや、それは僕と違うわ」

今日はマリインスキー劇場にバレエ鑑賞に出かけている『2人のユーリ』を思いながら、純は面白そうに笑った。
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