第1章 僕と勇利、時々『デコ』
『豪華絢爛?ゆーとぴあの宴』
「アレクくん、のぼせんようになー」
「大丈夫です~。勝生さん、飲水の持ち込み特別に許可して下さって有難うございます~」
スオミの血がなせる業か、入浴よりもサウナの方が好きな礼之は、南の声にだらしなく答えながらサウナ室の段差に寝そべっていた。
「あんまサウナばっか入り浸ってんじゃねぇぞ」
室内の熱気に顔を顰めながら、ユーリが中に入ってくる。
「あ、ユリ。…この角度からだと、ユリの裸体が絶妙なローアングルで…うひぃ!?」
「水風呂と休憩挟んでこそ、効果が出るってもんだろ」
「首筋に冷水垂らすのは違う…でも、お蔭でへそ下三寸のアレが引っ込んだから、外に出れるのは良い事かな」
めげない礼之の発言を聞いたユーリは、直後手桶の中の残りの冷水を彼にぶち撒けた。
備え付けの枕に頭を載せながら、オタベックはジャグジーのバスタブにその身を預けていた。
「随分と気に入ってるようだな」
「以前、腰を痛めた時に使用してから、興味が湧いたんだ」
隣のジャグジーから声をかけてきたスンギルに、努めて素っ気なく返すと、左手のブレスレットを一瞥する。
「このような充実したスパ施設を日常的に使えるのは、良いな。カツキが少し羨ましくなる」
「ああ」
呟きながら、オタベックはサウナ室から出てきたユーリと礼之や、相変わらず2人の世界を作っている勇利とヴィクトルの姿を見る。
「…遠慮なんかしないで、一緒に来れば良かったのに」
「どうした?」
「ただの独り言だ」
つい漏れ出た本音を誤魔化すように、オタベックは、今日は別行動をしている恋人の姿を脳内から消した。
「やっぱり、ここの露天風呂が一番だね!記念すべき勇利との再会の場所でもあるし」
「露天風呂入っとんのやから、景色も堪能せんかい。これやからワビサビも理解できひんデコは…」
「…ああ、ついでにお前との記念すべき場所でもあったね。言葉よりも足と拳を交わしたけど」
「人聞きの悪い事言わんといてくれるか?僕はお前と違うて殴ったり蹴ったりしてへんで」
「代わりに人の痛点突きまくっただろ!数ではお前の方が断然多かったぞ!」
「あははー。予想はついてたけど相変わらずだね♪」
「…貸切にしといて良かったよ」
『正妻』と『愛人』の舌戦を面白そうに眺めるピチットに、勇利はげっそりとした顔で呟いた。
