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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第1章 僕と勇利、時々『デコ』


『風雅人対2人のユーリ』


京の陰陽寮に所属するプレイヤーが、美少女の姿となった式神=式姫(しき)達と共に討魔部隊を率い、都を跋扈する妖鬼や悪霊共を打倒、平和を取り戻していく『討魔式姫伝』は、戦略ゲームとしてだけでなく、ガチャ等で得られる魅力的な式姫達のコンプに入れ込む者も多い。
そして、今回このゲームを題材にしたアイスショーは、女性スケーター扮する式姫達の再現度の高さは勿論の事、
「隊長ー!」
「上林隊長おぉ!」
そんな彼女達を指揮する隊長に扮した純の華麗な動きに、スケオタだけでなくゲームファンからも予想以上の熱い声が轟いていたのである。

「何で僕が…僕なんかせいぜい、いち検非違使として異星人相手に秋葉掘りしとんのが、関の山なのに」
「そんなマニアックな昭和のネタ、誰も判らないって。古代の京都が舞台なんだから、純にぴったりじゃない」
「こういう主人公的なモンは、勇利の役目やろ」
「いや、だって僕は」
「まーだグダグダ言ってんのかよ」
純と勇利が言い合う中、今ではすっかり2人と目線が変わらなくなったユーリが近付いてくる。
「昼の講演だって好評だったじゃねえか。俺、客席からあんな地鳴りみてぇな歓声聞いたの初めてだぜ?」
「あれは、あくまで隊長への声援で、僕への声援と違うわ」
「「そんな訳ないでしょ(だろ)」」
衣装のまま2人のユーリに凄まれた純は、小さく肩を竦めた。

ショーは佳境に入り、討魔部隊の前に強大な敵が現れる。
今回の為だけに作られたオリジナルのボスキャラ『西氷翠玉将鬼』のユーリと、ラスボス『東氷漆黒王鬼』の勇利である。
昨季で現役を引退した勇利と、足首の療養で今季は休養しているユーリの登場に、2人のファンから黄色い悲鳴が上がる。
「ジャンプの制限はあるけど、今も普通にリンクで滑ってるし」とオファーを快諾したユーリの滑りは、最早シニアデビュー時の未熟なものではなく、そして現役を離れても圧倒的な存在感を誇る勇利の悪役姿に、思わず純も引き込まれそうになる。
だが、
「…隊長!」
力強い声援に我に返ると、体制を整え視線を巡らす。
(そうや、今の僕は…そして、ショースケーターとしては君らにも負けへん!さあ、楽しもうか!)
2体の鬼を前に、『隊長』は不敵な笑みを浮かべた。
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