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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第1章 僕と勇利、時々『デコ』


『一夜限りのアイスドール』


「It's…JJ Style!」
プロ転向後も変わらぬテンションとポーズに、会場の「JJガールズ」達から黄色い悲鳴が上がった。
「はぁ、あんな派手な事された後やと、出て行きづらくなるなぁ」
「と言いつつ、実は純がやる気なのを僕は知ってる」
「あら、そうなん?」
「そうなん」
クスクスと笑い合うと、純は勇利や仲間達が見守る中、揃いのジャージを脱いだ。
一時は疎遠になっていた純と勇利だが、スケートを通じて再会し、そして今では強い絆で結ばれている。
そして一夜限りとはいえ、再び同じチームで一緒に戦える事を、2人は心の底から嬉しく思っていた。
準備を終えてリンクに向かう戦友の背中に、勇利をはじめ日本チームの声援が響いた。
「純ー!」
「おきばりやすー!」
「へぇ、おおきに♪」
純がリンクの中央でポーズを取るや否や、その身に纏う雰囲気が一気にリンク全体に広まり、会場内が何とも言えぬ緊張感に包まれた。
「ワォ!超久々に見たわ、純のアレ!」
「『アイス・ドールが立つと、リンクの温度が下がる』は健在か。流石じゃの」
「いいぞサユリ、JJの野郎のチャラい空気なんか、吹き飛ばしちまえ!」
「このような贅沢な顔ぶれは、プロ・アマ混成の認められたジャパンオープンだけ!続いては氷上の風雅人、日本の上林純の演技です!タイトルは『御神楽』!」
(刮目しい。これが上林純の舞や)
完全に臨戦態勢となった純は、曲の始まりと共に腕を優雅に広げる。
以前、高千穂で観た夜神楽からヒントを得て、純自身が作り上げた和プロに、会場全体が魅了された。

「なあサユリ、あんだけ滑れんなら競技復帰しねぇか?」
「今日限りやから出来た事や。それに、振付の仕事が出来ひんようになるし」
「んー…」
「何だ?このJJの復帰を望むのか?」
「お前は戻って来なくていい」
「純、お疲れ様。凄かったよ!」
「今回のは、いつか勇利にもと考えながら作ったんや。そろそろ和プロも試してみたいしな」
「その前に、ちゃんとコーチの俺の許可取ってよね」
「決めるのは勇利やしー」
勝負を終え、正妻と愛人がいつもの応酬を始めると、周囲から笑い声が起こった。
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