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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第1章 僕と勇利、時々『デコ』


『僕だけじゃなく、君も』


かつての同期、そして現在はスケーターと振付師という勇利と純の関係は、スケート界隈やファンの間でも概ね好評を得ていたが、やはり中には口さがない者や快く思っていない者もおり、
「上林は、勝生が有名になった途端図々しく取り入った」
「あの時勇利くんを1人きりにしたクセに、調子良すぎじゃない?」
等と、かつて純が故障した際、ろくにリハビリもせず逃げていた事をあげつらわれたり、批判される事も皆無ではなかった。
それらについて純は、自業自得だと割り切るようにしていたが、この頃純のSNSや商売をしている京都の実家にまで、中傷のメールや手紙が届くようになっていたのだ。
競技引退後スケ連の登録も抹消した純には、現在所属している事務所のようなものがない。
家族は「伊達に長い間この京都で看板張っとる訳やないから、一々気にせんでええ」と言ってくれるが、自分の事で彼らに迷惑をかけ続けるのはしのびなく、やはりある程度の制約を覚悟で幾つか声がかかっている事務所へ世話になるべきか、しかし、そうなったら果たして今後も勇利の振付をする事が出来るのだろうか、その前に僕は本当に勇利の力になれているのだろうか、と思い悩んでいた。

師弟対決という怒涛のシーズンを終えた勇利は、来季も純にEXの振付を依頼しようとした所、何処か歯切れの悪い純の様子に気付いた。
始めは適当に誤魔化されたが、この1年で以前よりも純の事や本性について判るようになってきた勇利は、少しだけ強めに追求すると、ついに観念したように純は自分の現在の状況について話した後で、「僕1人が責められるのはええけど、僕のせいで勇利まで悪く言われるんは、絶対に嫌なんや!」と、泣き出した。
そして、そんな純の窮状を知ったヴィクトルにより、拠点を長谷津に移すと同時に日本での新たなオフィスを構え、そこに『預かり』の形で純を登録したのである。

礼と理由を尋ねた勇利に、ヴィクトルは「何よりも勇利の為だけど…昔、俺も可愛い教え子にアイツと同じ理由で悩ませまくっちゃったからね」と、涼しい顔で答えた。
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