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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第1章 僕と勇利、時々『デコ』


『真夏の風雅人』


大阪で行われたアイスショーの後、出演者に浴衣を着用して貰いながら、バンケとは一味違った日本の夏を楽しむ夕涼み会が催されていた。
「夜になってもクソ暑ぃ…ニッポンの夏ってマジで半端ねぇな」
「日本も長野や北海道とかなら、夏でも涼しいんだけどね」
だらしなく足元をパタパタさせているユーリの隣で、勇利が団扇を手に応える。
「これでも、京都に比べたらマシな方や。けど、あんま無理はせんときな」
そんな勇利達の前に、純が現れた。
浴衣の勇利達とは異なり、小千谷縮の夏用着物を足袋や羽織までカッチリと着込みながら、涼し気な顔で微笑んでいる。
「サユリ、お前この暑さでソレって変態かよ!?」
「僕は、日本の暑さも和服も皆よりは慣れとるからなあ。それと、今回浴衣を提供してくれはったのが、僕の実家とも懇意にしとるトコやから、それなりのカッコでおらなアカンねん」
優雅な仕草で扇子を仰ぐ純の姿は、『アイス・ドール』『氷上の風雅人』の名に相応しく、参加者の中には歓声を上げながら、純の和服姿を写真に収めていた。
やがて、スポンサーらしき人物から通訳を依頼された純は、彼らに返事をすると勇利達から背を向ける。
「ごめんなあ、今夜はゆっくり話できひんわ。勇利やユリオくんは楽しんでな」
「純」
「うん、何?」
浴衣の袖口から取り出した冷感キャンディを1つ手渡しながら、勇利は純の耳元で囁く。
「ホントの所は?」
「…汗止め帯に半襦袢、クールステテコ大活躍。僕かて暑いモンは暑いねん。終わったら全部脱いで、キンキンに冷えたビール飲むのが今夜の楽しみや」
「…『おきばりやす』」
「『へぇ、おおきに』」
地を這うような小声で語られた、明け透けのない友人の本音を聞いて、勇利は笑った。

その後、純のSNSには『ビフォー&アフター』と題され『今夜の僕ほど、ビールの美味さを理解する人間はいない!』のコメントと共に、会場での和服姿と、ホテルの部屋でTシャツと短パン姿でビールを煽る画像がUPされていた。
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