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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第1章 僕と勇利、時々『デコ』


『甘味な挑戦状』


全日本選手権が終わり、純や勇利達が控室でひと段落していると、純のコーチである藤枝がビニール袋を手に現れた。
「おらよ、頼まれたモンだ」
「有難う」
「純くん、それ何ですか?」
「僕、今シーズンは全日本が終わるまでコンビニスイーツ断ちしてたんやけど、今日で解禁やから♪」
言いながら純は、クリスマス限定のコンビニスイーツを取り出すと、右の頬に笑窪を作った。
「純のコンビニお菓子好き、相変わらずだね。実家でも高級なお茶菓子作ってるのに」
「高いモノが美味いのは、当たり前の事やから。限られた予算でアイデアその他限界に挑戦する姿勢が好きやねん。今季夏と秋の限定スイーツ食べられへんかった時は、一瞬だけスケートやめよかなて思うたわ…」
「そこまで!?」
「日本のコンビニスイーツって、凄く凝ってますよね」
お菓子作りが得意でエスポー在住の礼之は、純の手に乗せられたトナカイを模ったケーキを、面白そうに見つめた。
「健坊と礼之くんもどうや?大会も終わったし、ちょっとならええやろ」
「有難うございます。お言葉に甘えて、頂きます!」
「おいも!」
「あ、勇利はこっちな」
「え?」
別のビニール袋から出されたミニサイズのカツ丼に、勇利は目を丸くさせる。
「僕からの『優勝おめでとう』と『色々お疲れさん』や。勇利の実家の味には敵わんけど、まあまあいけるで」
「あはは、有難う」
カツ丼を渡そうとした純だったが、ふと考えた後でその手を引っ込めると、代わりに自分のスイーツとフォークを勇利に差し出す。
「それで僕にひと口食べさせて?僕も勇利にカツ丼食べさせたるから」
「勇利くんと純くんのファーストバイトですか?これはレアな光景!」
「何言ってるのもー」
「あ、僕写真撮りますよ」
ケーキを南と半分こしていた礼之は、スマホを構えると、お互い照れ笑いをしながらケーキとカツ丼を食べ合う2人の先輩の姿を捉えた。

「…何舐めた真似してるんだ、コラ」
「俺、何もやってねえだろ!?」
ロシアナショナルの控室にいたユーリは、スマホを片手に地を這うようなヴィクトルの声を背に受けて、思い切り戦慄していた。


※この後、正妻と愛人の抗争が長谷津で勃発します。
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