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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第1章 僕と勇利、時々『デコ』


『エロス署長、爆誕?』


オフシーズンに長谷津で1日警察署長をする事になった勇利は、地元の為とはいえ慣れぬ大役に緊張する以上に、間近の2人による喧騒に頭を痛めていた。
「いつもの眼鏡でも、親しみのあるお巡りさんぽくてええやんか!リンクと違うんやから、下手に着飾った所で『普段と違いすぎ』て、叩かれるのがオチやで」
「仮にも警察署長だよ?いくら1日こっきりとはいえ、それなりのスタイルで臨むのが当然だと思うなあ、俺」
勇利としては早く当日が終わって欲しいと願うばかりなのだが、本人そっちのけで『正妻』と『愛人』の口論は収まらない。
「当日までに色々試してみて、どうするか決めればいいじゃない」という真利の助言という名のお節介で、ヴィクトルの部屋のドレッサーの前に坐らされた勇利は、ヴィクトルと純によってああでもないこうでもないといじくり回される。
「元々勇利は可愛らしいんやから、下手な小細工せんとちょっと分け目変えてこうすれば、充分いつもと違う雰囲気出せるやんか」
「甘過ぎ。いっそ『エロス』バージョンで眼鏡もコンタクトに変えてキリっとさせた方が、勇利のセクシーさもアピールできるのに」
「警察にセクシーもクソもないやろ!」
「あるってば。勇利はどうなの?」
「僕は、無事に済めばそれで…」
「ちゃんと考えろ(や)!自分の事だろ(やろ)!」
直接口に出せば藪蛇になりそうなので堪えていたが、「この頭痛の原因を作っているのは誰だよ」と内心で不満を募らせていた勇利は、やがて何か思いついたのか一旦自室に引き返すと、以前スポンサーの伝手で貰ったものの撮影で身に着けたきり、引き出しに仕舞いっ放しにしていた普段使いとは異なるデザインの眼鏡を取ってくる。
そして、鏡の前で髪形を『エロス』の如くオールバックにしてから、その眼鏡をかけた。
「あら、何やちょっとええ感じかも…」
「恋人いながら、何俺の勇利に見とれてるんだよ!」
「美しいものは観賞する為にあるんや!自然の摂理やろが!」
「2人共黙って。僕コンタクトは苦手だし、異論がなければこのスタイルでいこうと思う」
「「はい」」

当日の長谷津では、勇利の晴れ姿に地元のファンや福岡から駆け付けた南よりも、ヴィクトルと純が一番興奮していたという。



※結局は2人共単なる親バカならぬ勇利バカ。
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