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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第4章 番外篇・僕と『ヒゲ』


『嘱託な食卓』


純と藤枝の住居を訪問した礼之とユーリは、以前はなかったキッチンのビルトインコンロを、物珍し気に眺めていた。
「コレ、関西で良く聞く会社のニューモデルですよね」
「すげぇハイテクだな。ヒゲさんの趣味か?」
2人からの無邪気な質問に、純はわざとらしく溜息を吐く。
「ヒゲが買い替えたんや。別に前のも壊れてなかったのに、無駄にお金使うて…礼之くんやユリオくんやったらともかく、僕じゃよう扱われへんのやから、とんだ宝の持ち腐れや」
やれやれ、と腕を組む純とは対照的に、2人は顔を見合わせていた。
「どないしたん?」
「あのよ、サユリ。日本の最新式のコンロって、材料揃えて専用のボタン押せば、後は勝手にコンロの方でやってくれんだよな?」
「?まあ、そうみたいやけど」
「それなら料理がヘタな…みぎゃっ」
不意に脇腹を抓られたユーリは、小さく首を振る礼之を見て何か思い当たるような顔になると、
「…料理が苦手なサユリでも、何とかなるからじゃねぇの?」
「言い直さんでもええから」
藤枝に師事するまでロクに料理をした事がなかった純は、苦笑する。
「それに、今のは操作もお手入れも楽ですし。きっと藤枝先生は、純さんが火傷や怪我をしないようにって思ったんじゃないですか?」
続けられた礼之の発言を耳にした純は、購入時に頑なすぎるまでに我を通していた恋人の姿を思い出すと、やがて「…アホ」と口中で呟いた。

「礼之。その豚、軽くヤキ入れとけよ」
「うん。後で酸の入った液に漬け込んで、圧をかけるんだよね」
「…君らは、お料理しとんねんな?」
その後、最新コンロを使ってみたいという2人に今日の夕食を任せた純だったが、料理と程遠い単語を並べる彼らに、思わず器具の片付けの手を止める。
やがて帰宅した藤枝に「今夜のご飯は期待できるで」と言うも、「お前比でちゃんと上達してるから、俺はいつでも期待してる」と返され、「ゴチソーサマー!」とユーリ達に冷やかされる羽目になった。
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