• テキストサイズ

【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第4章 番外篇・僕と『ヒゲ』


『復活!氷上のアイドル()?』
※某ゲームネタ注意。

「何か純さんの振付って、遊び心がなくないですか?」
今季藤枝の所へ移ってきたシニア1年目の選手は、純の振付に率直と生意気を綯い交ぜにした意見をぶつけてきた。
藤枝のダメ出しにも食らいつく根性は認めるが、まだまだ心身共に鍛錬が必要な彼の不躾な言葉に、純は目を細める。
「僕の振付が不満か?話は聞くで」
僅かに眉をつり上げた藤枝を制すと、純はその選手に続きを促す。
「不満って程じゃないですけど、この振付純さんの生真面目さばっかが浮き彫りになってて、俺とは合わない部分があるっつーか…俺としては、もっとコミカルな動きもしたいんですけど」
「コミカルな動きは、相応の技術と見せ方を知らんとお粗末なモンになる。今の君に必要なんは、基礎を身に付ける事や。それをロクにできひん癖に欲張っても、何の意味もあれへん」
コミカルプロといえば、日本男子の中で特に顕著なのは南だが、あれは彼のリズム感の良さと、スケーティングの基礎を習得しているからこそのものである。
ある種勇利や礼之にも出来ない表現を、南は完璧にモノにしていると純は確信していた。
「いつまでもJrの気分でおったらアカンで。シニアの舞台は小手先の誤魔化し効くほど甘くない」
「でもそれって、純さんがコミカルプロ苦手なだけじゃないんですか?」
「…面白い事言うてくれるなあ」
口の減らない選手に周囲がザワついたが、純は口角だけの笑顔を浮かべる。
「ほんなら、どっちが面白い振りが出来るか勝負するか?」
スマホを取り出し何処かへ連絡した純は、やがてリンクの一角を借りるとスニーカーに履き替え、某『自称・永遠の17歳』アイドルがメルヘンにデビューする曲に合わせて踊り始めた。
純の完璧な振付と表情、そして、純の招集により駆け付けた学祭以来の後輩達によるヲタ芸の野太い声援が、周囲を異様な空気に包み込む。
「早ぅ君もやらんかい。『打ち』もおるから寂しないで」
「スミマセン、俺が悪かったです。勘弁して下さい」
「…お前は、俺以上の鬼か」
土下座する選手をどす黒い目で見下ろしている純の姿に、藤枝は呆れ顔で呟いた。
/ 230ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp