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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第4章 番外篇・僕と『ヒゲ』


『コーチとの最後の夜・1』


完璧ではなかったが納得のいく形でFSを滑り終え、同時に現役生活も終えた純は、いつもより長めの時間をかけて浴室から出ると、Tシャツにハーフパンツ姿で濡れた髪をタオルで拭きながら、ベッドに腰かけた。
「寝ろ。マッサージしてやるから」
「…僕は引退したんやで。アンタとの契約も、全日本までやったからこれでおしまいや。せやから、もう僕はアンタの生徒やない」
おしまい、という単語を口にした瞬間心の中が僅かに揺らいだが、純は顔に出さず淡々と藤枝に返す。
「まだEXが残ってる。それに、背中は自分じゃできねえだろうが。判ったら、言う通りにしろ」
再度促された純は、タオルの隙間から暫し藤枝の様子を窺っていたが、1つ息を吐くと「アフターサービス万全なコーチで、ホンマおおきに」と呟きながらベッドにうつ伏せになった。
藤枝が近付いてくる気配に、何故か純は己の鼓動が早くなるのを覚える。
(練習や試合後のマッサージは、これまでされてきてるやろ?ただ、最後やからちょっと感傷的になっとるだけや)
そう自分に言い聞かせていると、藤枝の大きな手が自分の腰に触れてきた。
「…っ」
「痛むか?」
「平気や」
腰から膝、ふくらはぎ等のマッサージを受けて、純はいつもと変わらぬ藤枝の手の温もりに安堵しつつ、試合の疲れから睡魔に囚われ始めた。
しかし、藤枝の施術が純の背中にかかった時、ベッドのスプリングが軋むのを覚えた純は目を瞬かせる。
それが藤枝が自分のベッドに上がったのだと気付くも、それとは別に先程から自分の身に触れる藤枝の手が、熱を帯びているのを感じていた。
(確かにこの人は、僕よりも体温高いけど…)
「純…」
背中から手が離れたと思った矢先、荒い吐息交じりの呼びかけと共に、純の内腿と首筋に藤枝の手と髭に覆われた唇が触れてきた。
「!」
弾かれたように身を起こし逃げ出そうとした純だったが、体勢の不利もあって、易々と藤枝に組み敷かれてしまう。
「暴れんな、大人しくしてんなら悪いようにはしねえ」
「離さんかい、この…っ…!ぁ、嫌、嫌や!」
Tシャツの隙間に手を入れられた純は、悲鳴を上げると身を捩った。
「諦めろ、お前はもう逃げらんねえんだよ」
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