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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第4章 番外篇・僕と『ヒゲ』


『ひと足先に引退式?』


西日本選手権を無事通過した11月のある日。
「ヒゲー。僕、今月の大学の学祭に1日だけ参加してもええかな?」
「学祭だぁ?」
「僕の学生生活も残り僅かやし、学校の皆にはスケート中断してやさぐれとった時も、変わらず接して貰うてたから、最後の思い出を一緒に作りたいねん」
「まあ、1日なら…全日本控えてんだから、怪我とかすんじゃねえぞ」
「大丈夫。僕は講堂のパフォーマンスで、ゼミの仲間や友達に紛れて端っこで踊っとるだけや」

「ホンマにええんか?純」
「心配いらん、ヒゲの言質は取ってある。僕は、ウソは1つも吐いてへん」
スマホの録音ファイルをかざしながら、純はドヤ顔で仲間に返す。
「我が校のモットーは、学問研究には全力で、勿論武道や運動も全力で…そして、アホやバカをやるにも全力で、や」
流石に下はパンツスタイルだが、アイドルグループ調の衣装に身を包んだ純達が舞台袖から登場すると、見事なまでに訓練されたギャラリーのアリーナ席から野太い歓声と盛大な掛け声と共にヲタ芸の打ちが始まる。
某アイドルゲームの音楽に合わせて完コピした振り付けを踊る純達に、講堂のボルテージが一気に上昇した。
確かにセンターではないが、いわゆる「リーダー」の位置で切れの良いダンスを披露する純に、講堂内の学生や一般客からどよめきが起こっていた。
「皆、今日は来てくれて本当に有難う!ここでリーダーから大事なお知らせが…」
センターを踊っていた後輩からマイクを渡された純は、アイドル口調で言葉を発する。
「私は、本日を持って引退します!修論ももうすぐ完成するし、来年の春には卒業します!」
「「「ええーっ!?」」」
「今まで有難う!卒業しても、皆の事は忘れません!」
妙なノリに包まれた会場の模様は動画サイトやSNS等で拡散、その際「上林はん、あんたスケートせんと何してはるんですかww」「キレッキレやないですか」「アイドル活動お疲れさまでした。ついでに全日本出場おめでとうございます」「全日本ついでかよw」というコメントも見られ、「何で俺はコイツを止めなかったんだ」と藤枝を盛大に後悔させたという。


※その後、全日本での競技引退発言で「学祭の時とテンション違いすぎw」と更に突っ込まれる事になる。
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