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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第3章 僕と「はじめまして」や、その他諸々。


『男達の甘い幸せ』


試合を終えて滞在先のホテルに戻った礼之は、ミケーレと一緒に備え付けの電子レンジの前にいた。
「お前が菓子作りが好きなのは、バイオや勇利の話で知っとったけど、まさか大会中までとはな」
「今回の滞在先の部屋に電子レンジついてると知ってから、楽しみにしてたんです。日本から白い粉も用意しましたし!」
「他人が聞いたら誤解を招く発言はやめい」
持参したホットケーキミックスと耐熱容器に現地で調達した牛乳とバター等を使って、礼之はマフィンを作っていた。
試合の後で疲れた身体を持て余していたミケーレは、ふとどこからか漂ってきた甘い匂いに、隣の部屋にいるのが礼之だというのを思い出すと、彼の部屋のドアを叩いた。
思わぬ来訪者にはじめは恐縮しまくっていた礼之だったが、自分の行為を咎めに来た訳ではないと知ると、「良かったら、カロリー摂取の節約に協力してくれませんか?」とミケーレを誘ったのである。
「ワシも甘い物は嫌いじゃないが、お前は本当に楽しそうじゃな」
「僕、お菓子を作るのも食べるのも大好きですから。…確かに、人間は一生お菓子を食べなくても生きていく事は出来ます。でも、僕は辛かった時おばあちゃんのお菓子に本当に助けられたんです」
幼い頃の礼之は、自分の容姿を揶揄される事でふさぎ込んでいた時期があった。
そんな礼之に日本の祖母が「一緒にお菓子を作りましょう」と誘ってくれたのだ。
「その内にスオミのmummoも張り合うみたいになって。2人の祖母のお陰で、色んなレパートリーが増えました」
「ええバァちゃん達やな。しかし、よぉ出来とるのぉ」
「ここに来る前に、何度も試作を重ねましたから」
出来上がった菓子に、2人共無意識に頬を緩める。
適当に切り分けた1つを口に運ぼうとした瞬間、ドアホンが鳴った。
「ピチットさん!」
「エミルにオタベックも同じホテルじゃったんか?」
「向かい側が僕の部屋だって知らなかったでしょ♪」
「おっ、美味そうなモノ発見!ミッキーだけ抜け駆けはズルくない?」
「アレク、カザフのチョコとその1切れ交換しないか?」

同じ試合を戦い抜いた男達の、妙に女子力の高い打ち上げの様子は、ピチットのSNSを通じて瞬く間に拡散されていった。
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