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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第3章 僕と「はじめまして」や、その他諸々。


『夢の終わり』
※少年期のオタベックの過去を捏造しているので、苦手な方はご注意下さい。


欲情と嗜虐心に満ちた醜い顔を晒しながら、男が自分を見下ろしている。
少年時代に巻き込まれた事件以降、時折夢の中に現れては自分を苛み続ける男。
しかし、ついこの間までは恐怖に囚われるだけだったオタベックは、嫌悪も露に顔を上げると、毅然と言い放つ。
「今すぐ俺から離れろ。この下手クソ」
オタベックの視線と言葉に、男の顔どころかその姿や彼の周囲までもがグニャリと歪み出した。

「大丈夫か?」
薄闇の中、守道の呼びかけにオタベックは目を覚ました。
暫くしてここが彼の寝室で、今夜自分は彼の部屋に泊まりに来ていたのを思い出す。
『あの男』とは違い、心配げに見つめてくる守道の眼差しを、安堵と仄かな満足感で受け止めながら、オタベックは彼に問い返す。
「俺は、うなされていたのか?」
「ほんの少しだけね」
守道から水の入ったグラスを渡されて、オタベックは中身を空けると、その間もずっと自分に寄り添ってくれている彼の温もりと視線を、心地良く感じていた。
はじめはただの友人の『センセー』で、仄かな憧れのようなものを抱いていた『サユリ』の後輩、という印象しかなかった。
二度と会う事はないと思っていた矢先、意外な形で再会した2人は、やがて互いの複雑な事情にも触れ、いつしか惹かれ合うようになっていったのだ。
過去の事件で受けた瑕を、長い間心の奥底に抱えたままだったオタベックは、守道に全てを打ち明けた事で、漸く素の自分を取り戻せた。
それ以来、昔の夢も見ないでいたのだが、暫くぶりに現れた『あいつ』への感情も、恐怖より嫌悪感の方が遥かに上回っていた事に、オタベックは苦笑する。
「…本当に平気?」
そんなオタベックの様子に、守道が先程よりも眉根を寄せながらもう一度尋ねてきた。
空のグラスをベッドサイドに置いたオタベックは、返事の代わりに彼に身を預ける。
「それは貴方が一番良く知ってるだろう?」とやや熱を帯びた声で囁くと、守道の腕が先程よりも強くオタベックの身体を抱き込むと、押し倒してきた。

(きっと俺は、もう二度とあの夢は見ない)

恋人の愛撫に身を委ねながら、オタベックは様々な感情の吐息を1つ漏らした。
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