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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第3章 僕と「はじめまして」や、その他諸々。


『三国のお墨付き』


「すみません。部外者の俺まで図々しく滞在させて頂いて」
『温泉on ICE』に出演するオタベックと共に長谷津に訪れた守道は、招かれた「ゆーとぴあかつき」で、今やフィギュア界の『怪物』と畏怖される勇利に頭を下げた。
「ううん、君の事は純とユリオから良く聞いてたし。折角だから温泉もショーも楽しんでってね」
「別に部外者やないやろ?僕らもおるんやし」
「そうだぜセンセー、水臭ぇ事言うなよ」
「折角の里帰りだから楽しんできなさいって、お父様…大使にも言われただろう?」
「そういえば、君のお父さんは在ロシア日本大使だったね。俺も昔、会った事あるよ」
「今は、在カザフスタン日本大使です」

ヴィクトルの発言をさり気なく訂正したオタベックをはじめ、ユーリや純にツッコミを食らった守道は、肩を竦める。
そのまま暫し彼らと談笑しつつ、久々の日本を堪能していたが、不意に母屋の方から何やら声が聞こえてきた。
「どうしたの?」
父親の利也に尋ねた勇利は、旧くなった水撒き用のホースを新しいものに交換しようとするも、水道栓が数年前新たに庭に設置されたウッドデッキの下にあるので、取り付けに難儀しているのを見た。
一番小柄な母親の寛子がデッキの下に手を伸ばそうとしたが、足腰を痛めたら危ないと周囲が止める。
どうしたものかと思案していると、淡々とした守道の声が届いた。
「水道栓の真上のデッキ部分を切り取って、開閉し易いように取っ手と蝶番をつけたらどうですか?何なら俺やりますよ」
「え?でも、お客様にそんな…」
現在は建築士になるべくカザフで勉強を続ける守道の提案に、勇利は躊躇していたが、そこへ間髪入れず3種類の声が届いた。
「一宿一飯の恩で働いとき。こいつは口は悪いけど、腕は確かや」
「センセーこういうの得意だから、安心していいぞカツ丼」
「カツキ、他はともかくこうした事は守道に任せておけば大丈夫だ」
発言の後で顔を見合わせる3人に、勇利は笑った。
「日露香3ヶ国のお墨付きなんだね。それじゃ、お言葉に甘えてお願いしても良いかな?」
「判りました。では、見積もりに1週間…」
「え、そこまで本格的なの?」
「冗談ですよ」
『怪物』らしからぬ幼い勇利の表情を見て、守道は口元を面白そうに歪めた。
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