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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第3章 僕と「はじめまして」や、その他諸々。


『輝きの中で』


新年を彩るイルミネーションの中を、守道とオタベックは雑踏に紛れて進んでいた。
帽子と眼鏡でカモフラージュしつつも、何処か人の目を気にしながら歩くオタベックを見て、守道は苦笑する。
「同性の友達や家族連れもいるじゃないか。折角のライトアップなんだから楽しみなよ」
とは言うものの、男同士で手を繋ぐ訳にもいかず、光の中をただ歩き続ける。
手を伸ばせばすぐ触れられるが、それが出来ないもどかしさに、オタベックは僅かに俯いた。
「ライトアップにはまるで似合わない、辛気臭い顔だな」
人を食ったような声に、オタベックが少しだけムッとしながら顔を上げると、守道がスマホを突き付けてきた。
「これから1つ、勝負しないか?」
「勝負?」
「どちらがこのイルミネーションを背景に良い写真を撮れるか。制限時間は5分、撮ったものの中でコレだというのを1枚だけ提出だ。負けた方が飲み物奢りって事で、どう?」
「…乗った」
先程とは打って変わって表情を輝かせると、オタベックもポケットから守道と色違いのスマホを取り出した。

ライトアップされた夜の街の美しさに目を細めながら、オタベックはスマホのカメラを構えた。
守道と今のような付き合いに至るきっかけとなったのも写真だったな、と思いながら撮影を続けていたが、時間が迫ってきたので待ち合わせ場所へと戻る。
「良いのは撮れた?」
「まあな」
互いにフォルダの中から厳選した1枚を決めると、まずはオタベックが見せる。
イルミネーションと建物を絶妙な角度から収めた画像に、守道は「流石だね」と呟いた。
「次は貴方の番だ。今更変更はナシだぞ」
「ああ」
そう言って目の前に差し出された守道のスマホの中身を確認したオタベックは、次の瞬間絶句した。
そこにいたのは、スマホを手にイルミネーションの中で微笑む自分の姿だったからだ。
「リンクにいる時もだけど、輝きの中にいる君は、本当に良い顔をするね」
「…ズルい。こんなの」
照れ隠しに拗ねた声を出すオタベックの肩を、守道はさり気なく抱き寄せる。
「俺の勝ちで良い?」
「仕方ない。何が飲みたいんだ?」
「ブランデー入りの紅茶を。…君の部屋で」

熱い囁きに答えるように、オタベックは恋人の腕にその身を預けた。
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