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【YOI・男主人公】小話集【短編オムニバス】

第1章 僕と勇利、時々『デコ』


『至福の光景』


「おめでとうございます、勝生さん!南さん!」
「勇利く~ん!アレクくんも、また3人で全日本の表彰台に立てたとです!」
全日本選手権男子シングルの結果は、昨シーズン純が現役最後の試合で見たのと全く同じ面子が揃っていた。
表彰台の一番高い位置に立つ勇利の両隣では、南と礼之が互いに顔を見合わせる度にニコニコ笑っている。
「来シーズンはいよいよ僕、シニアに上がりますからね。負けませんよ~」
「おいも負けんばい、アレクくん!」
「2人ともシーズンベスト更新できてたね。おめでとう」
「勇利くん、おいの記録ば覚えててくれたとですか!?ぅ、うぅ嬉しかあ~!」
「有難うございます!だけど僕、いずれ勝生さんにも南さんにも勝ってみせますから!」
「うん、これからも頑張ろう!」
「「おー!」」
ひと通りのセレモニーが終わった後、勇利は南と礼之を自分の表彰台に乗せると、そのまま2人の肩を抱き寄せた。

今季の勇利と礼之のEXを振付し、更に今回の全日本ではロシアナショナルで不在のヴィクトルに代わって勇利のコーチ役をしていた純は、すっかりやに下がった表情でリンクサイドからその光景を眺めていた。
「もうなんなん、この凶悪なまでの可愛らしさ…3人共日本男子フィギュアの至宝やろ…こんな眼福な表彰台拝めるナショナルなんて、日本だけや…」
動画と写真の両方をスマホで撮影しながら、純は普段はコンプレックスに思っている右頬の笑窪を惜しげもなく晒すと、不気味な忍び笑いを漏らし続ける。
「これ程『可愛いは正義』な表彰式が、ロシアナショナルで拝めるか!?直に見れんと残念やったな、ヴィクトル・ニキフォロフ!画像と映像は勇利の演技と一緒に送ったるから感謝せぇ!」
もはや他人のふりを決め込んでいる藤枝やその他関係者の視線など構わず、純は高笑いを繰り返していた。

「…はぁ」
「──言いたい事があるなら言え」
成長期の不振が続く中、それでもどうにかロシアナショナル3位となったユーリは、表彰台から自分を見下ろすヴィクトルの微妙な顔を、苛立たしげに睨み返していた。
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