第14章 その頃の二人
あんな玩具(爆弾)で狙うということは、会議に出席するまでに襲撃をしてくる可能性が高い。
おそらく、襲撃に失敗した場合の最終手段として、殺し屋の異能力者が用意されている。
そう推測したのは、SPの二人だった。
そして、その推測通り、僕らは会議場に着くまでに幾度となく襲われた。
ライフルで狙われること三回、暴漢に襲われること二回、爆弾が三回……どれも吾妻さん、錦戸さん、詞織さんの活躍でどうにかなった。
僕は何もしていない。
強いて言うなら、暴漢の攻撃が当たらないように元議員の壁になったくらいだろうか。
元議員はどうにか無事に会議場に着き、今は二人のSPを連れて会議に出席している。
僕らは外で待機。
相手が異能力者でなければ、二人の敵ではない。
会議が行われているビルの前のベンチに、僕と詞織さんは座っていた。
元議員とSPの二人を見送って、何をするわけでもなくぼんやりとしている。
一応、周囲を警戒してたまにキョロキョロしていると、隣に座る詞織さんが何かを呟いていた。
「どうかしましたか?」
そう聞くと、詞織さんは小さな手の中で弄んでいたチョコレートをギュッと握り締める。
「あぁ、もうッ!」
「は、はい!?」
そして、立ち上がった詞織さんが叫んだ。
「太宰さんに会いた――い‼︎」
…………え?
何を言い出したのか分からず反応できずにいると、彼女は再び乱暴に腰を下ろす。
「太宰さんに会いたい太宰さんに会いたい太宰さんに会いたい太宰さんに会いたい太宰さんに会いたい……ッ!」
怖い怖い怖い怖い怖い……ッ!
まるで何かの呪文のように「太宰さん」の名前を繰り返す詞織さん。
どうすればいいのかとオロオロし、僕は社を出る前に太宰さんに言われたことを思い出した。
「詞織さん! とりあえず、チョコレート食べませんか⁉︎」
太宰さんから預かっていたチョコレートを差し出すと……。
「………………食べる」
……落ち着いた。
自分が持っているチョコレートはそっちのけで、僕が差し出したチョコレートを詞織さんは食べる。