第13章 チョコレート少女
「えぇ!? また護衛の仕事⁉」
仕事を持ってきた国木田さんに、詞織さんは抗議の声を上げた。
僕はまだ見たことないが、詞織さんの異能は戦闘向きで、よく護衛の仕事を回されるらしい。
「太宰さんは⁉ 太宰さんは一緒じゃないの⁉」
「太宰は別の仕事が入っている。それに、太宰を連れて行けば、お前は護衛対象より太宰を優先するだろう」
頭痛がするのか、こめかみを押さえながら国木田さんが言う。
すると詞織さんは、太宰さんが座る席へ行って、その膝の上に乗り、彼の首に腕を回した。
「当然でしょ。あたしには、太宰さん以上に大事な人なんていないんだから」
「おや、嬉しいことを言ってくれるではないか」
本当に嬉しいのだろう。
太宰さんはとろけるような笑みで詞織さんの頭を撫でる。
二人は恋人ではないらしい。
確かに、スキンシップは谷崎さんたち兄妹ほどではないけど。
それでも、太宰さんが詞織さんに向ける視線は恋人に向けるような甘さを含み、詞織さんが太宰さんに見せる反応は恋人に対するもののように思える。
「それが太宰とお前を一緒に護衛任務につけない理由だ」
「むぅ、あたしのせいだって言いたいわけ?」
詞織さんが拗ねる。
僕より一つ年下らしいけど、言動や行動はかなり子どもっぽい。そのせいか、実年齢より幼く見える。
「詞織、あまりワガママを言ってはいけないよ。このままでは、ストレスで国木田君の胃に穴が空いてしまう」
「そのストレスの最たる原因はお前だがな、自殺愛好家(マニア)」
国木田さんの眉間にグッとシワが寄る。それだけで、国木田さんの苦労が伺えるようだった。
話を戻すように、彼は一つ咳払いをする。
「今回の護衛任務には小僧も連れて行け」
「え、僕もですか?」
突然話を振られて戸惑う僕に、詞織さんはあからさまに顔をしかめた。